2月の岩手山(二日目と最終日)

(つづき)

[二日目]
 もう山頂も踏んだから今日はさっさと下山してかまわなかったのですが,降雪直後に斜面を通過すると危険なのでもう一泊することにしました.というのはほとんど口実でして,少しでも長く山の上にいたい,というのが本音です.ちなみに,昨夜の降雪量は僅かでした.
 雪は早朝に止んだものの,ガスがなかなか晴れません.9時に散策に出かけ,七合目まで行って1時間ほどで戻りました.七合目と九合目の間は不動平と呼ばれる緩斜面で,冬は小屋以外に目立つ目印のない雪野原です.ガスのとき歩くには,昔なら篠竹が必要でしたが,今はGPSのおかげで自由に歩き回れます.ただし,電池切れすると大変なことになります.
 14時にやっとガスが晴れたので,今度は九合目の方向へ出かけました.九合目を超えて外輪山の西斜面にさしかかると,高さ1~2mのモンスターが並んでいました.空は抜けるような青色となり,鬼ヶ城(岩手山から西に伸びる断崖)にはガスの残りが引っかかって傾きかけた太陽の光を散乱させていました.あまりの絶景に,ここは天国かと思いました(まだ死んでいないのに).
 16時に小屋に戻ってから16時半にまた出かけました.今度は夕日が目当てです.地平線近くの雲に沈む平凡な日の入りだったのがちょっと残念です.暗くなるまで景色を見て,雪明りを頼りに小屋へ戻ったら18時でした.

写真:二日目の1.ダケカンバです.

写真:二日目の2.モンスターたちです.小ぶりだけど愛嬌があります.

写真:二日目の3.夕日です.
[最終日]
 夜明け前から快晴でした.平凡な日の出でしたが,周囲の雪がピンク色に染まり,下界に帰って行く私を見送ってくれました.
 7時に小屋を出発.積雪期に最も注意を要する七合目から五合目の間にも新雪はほとんど乗っていませんでした.山から降りてしまうのが惜しくてわざとジグザグに歩いたりしたのに10時には登山口に着いてしまいました.
 そこから先の車道は登りのとき暗くてわからなかったのですが,車の轍と思ったのがほとんどスノーモービルの走行跡でした.
 今回の登山では全く人に会いませんでした.六合目付近の足跡がこのあたりまで誰かが来たことを示していましたが,それより上へ登ったのかどうかはわかりません.
写真:最終日の1.八合目避難小屋と朝日です.早池峰山が右手のほうに小さく写っています.

写真:最終日の2.八合目避難小屋と外輪山です.雪面の足跡は全て私のものです.

写真:最終日の3.七合目と六合目の間を下山中の私です.
 ところで,今回は11回目の岩手山であり,2月から12月まで各月一回ずつ登ったことになります.残るは1月だけなので,来年は岩手山へ正月登山することにします.
(おわり)

コメント

  1. 夕日と朝日の写真は見事ですね。山での景色を切り取って写真に残したいと思っても、なかなか思うように行きませんが(特に私のようなチープなデジカメでは)、SHさんの写真を見てると、ため息が出てしまうほど美しい景色が想像できます。
    福島以北の山には行ったことがない私にとって、岩手山はまさに未知の山ですが、SHさんの文章と写真でその魅力が伝わってきます。SHさんが岩手にいる間に、一度行ってみたいです。

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  2.  masaさん,こんばんは.masaさんのカメラでもちゃんと写っていますよ.マウナケア山のサンセットの写真なんかとても良い色が出ています.まことに僭越ながらひとことアドバイスさせていただくと,太陽を画面中央にもってこずに,カメラを少し上か下に振るともっと広がりを感じられる写真になったと思います.
     岩手山は数ある日本の山の中で格段に優れているわけではありませんが,岩手とくに盛岡周辺の人にとっては非常に特別な山です.また,現在盛岡に住んでいる私にとっても「地元」の山であり,大切なホームゲレンデです.
     岩手山ばかりでなく,八幡平もどうぞ.盛岡から八幡平へはmasaさんが加波山へ行くのと同じくらい手軽に行くことができますが,5月なら豊富な残雪が,夏なら湿原や森林の高山植物が楽しめます.大いに羨ましく思っていただけること請け合いです(笑).
     それから,もし岩手山や八幡平へおいでになるなら盛岡の風情も含めて味わっていただくとよいと思います.歓迎いたします.

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