GW前半の剱岳八ツ峰
遅くなりましたが、忘れないうちにIさんと行った剱岳八ツ峰の報告をします。雪のある八ツ峰は個人的に是非行ってみたい雪稜でしたが、なかなか決心がつかず、計画確定も山行直前となってしまいました。結果的には縦走できたので達成感はあるのですが、なかなか手強く、反省点も多い山行でした。
4月26日
扇沢(6:30)-黒部ダム駅(7:00)-内蔵助出合(7:55)-内蔵助平(9:00)-ハシゴ谷乗越(11:45)-真砂沢(13:30)
前夜の23時ころIさん号でつくばを出ました。運転を交代しながら扇沢駐車場に6時ころ到着。始発のトロリーバスに間に合いそうなので急いでパッキングして乗り込みました。黒部ダム駅までは往復2710円(荷物込み)で、室堂までだとその3倍以上のお金をとられます。
ダム脇の登山口から雪をくぐりぬけて外に出ました。朝早いのでやや雪が硬い急斜面をキックステップで黒部川へ降りていくところから山行開始です。雪が多いのか雪伝いに対岸に渡れました。そこから一日かけて真砂沢までの長い行程が待っています(人気がないはずです)。トレースもなく、実際他には誰にも会いませんでした。天気は曇りで暑すぎないのが幸いでしたが、それでも私は上半身服一枚でちょうどよかったです。内蔵助出合からすぐのところで川原に下りたためちょっと悪い登りがありましたが、それ以外は単調な登りがハシゴ谷乗越まで続きました。ハシゴ谷乗越からはできるだけ夏道沿いにルートを確認しながら真砂沢出合まで下降しました。稜線上の木のハシゴの部分は結構急な雪壁になっていました。真砂沢出合に着き、八ツ峰マイナーピークからのデブリが迫っていてちょっと気持ち悪かったですが、夏のキャンプ場だと思われる台地にテントを張りました。このころから雨になりました。結局この日は真砂は我々だけでした。
27日 真砂沢幕場(4:30)-八峰1,2のコル(8:15)-5峰(12:30)-5,6のコル(16:00)-幕場(17:00)
ガスが出ていましたがそれほど濃くなく、出発前の天気予報ではこの日から回復ということだったので、行ける所までいくつもりで出発しました。1,2のコルへの出合まで一時間あまり。剱沢から八ツ峰にくるパーティがあるかなとも思っていましたが、天気が悪いせいか、誰もやってきませんでした。出合からアイゼンを着けて、約3時間かけて1,2のコルまで雪壁を詰めました。なかなか急でしたが雪は安定していて悪いところはありませんでした。
1,2のコルに出ると八ツ峰の下半のものすごい雪稜が目に飛び込んできました。一気に緊張が走り、ホントに行けるのだろうかという不安が頭をよぎりました。トレースはまったくなし。
まず1.5峰まで上ってそこから長次郎側に10mほどの懸垂下降です。そこからはロープを結びあって行動しました。トラバースして稜線に戻り、2峰まで雪稜を登りますが、ピークに出るところで少しルートを探しました。ピークから長次郎側に少し雪稜を下ったところに懸垂の支点がありました。回収失敗した懸垂下降用のロープが残っていました(当然使えません)。懸垂下降で下り、3峰まで小ピークを越えながら雪稜を進みます。3峰ピークからは少し下ってまた懸垂下降。3,4のコル手前に降り立ちます。ここからも雪稜が続き、膝下くらいのラッセルをしながら4峰へ、そしてまた懸垂下降。そしてようやく5峰を登り切って、5,6のコルへの懸垂下降点にたどり着きました。
ここまで結構時間を食ってしまい、今後どうするか考え始めていましたが、とりあえず5,6のコルまで降りようと三の窓側に懸垂下降しました。これが後で気づくのですが大間違いで、露出していた支点に騙されました(事前にちゃんと情報収集しておけば、ここは長次郎側に降りることは確認できていたはず)。空中懸垂気味の急な懸垂下降で、50mダブルで下りましたが下までぎりぎり届かないという状態でした。途中に見えた下降支点にも体が振られて移れず、結局ロープいっぱいまでおりてそこにたまたまあったハーケンに体重を移し、2,3mのクライムダウンでようやく降りることができました。この下降に小一時間くらい時間をくってしまい、上にいるIさんは相当不安だったようです(ゴメン!)。Iさんが下るときにはなんとか途中の支点で一回切ってほしかったのですが、やはり体が振られててダメ。私と同様、苦労して下降する羽目になりました。
なにはともあれ、降りることができたのでほっとしたのもつかの間、今度は回収しようとしたロープがビクとも動かなくなりました。それでもIさんと2人がかりでようやく動き一本分は回収できたのですが、ロープの最後が何かに引っかかっているらしく、もう一本はどうしても回収できませんでした。仕方なく一本はそのまま残置し、少しのトラバースで広い5,6のコルへ出ました。もう夕方でへとへとでした。5,6のコルでビバークして明日再チャレンジ、も頭をよぎりましたが負担が大きいのでここはいったんベースに戻ることにしました。長次郎谷は結構足を取られて快適には下れませんでしたが、それでもなんとか17時ころには帰幕できました。
夜、明日のことをIさんと話し合いました。八ツ峰はあきらめ、源治郎をやろうかという案も出ました(Iさんは内心この案を支持していたらしい)。が私は八ツ峰をやってみたい気持ちが残っており、結論は翌朝出すことにしました。
28日 幕場(4:40)-3,4のコル(7:40)-5,6のコル(10:40)-8峰の取付(16:10)-池ノ谷乗越(17:00)-幕場(18:45)
朝、ガスがありベストの天気ではありませんが昨日並くらいにはよさそうでした。これで私の心は八ツ峰に決まり、上半部の縦走でロープが二本必要となる可能性があるので、3,4のコルから上がってロープを回収していくことにしました(源治郎に行きたかったIさんとしては、えー!だったと思います。ゴメン)。昨日のトレースがあるので、3,4のコルへの出合までは快調。そこからコルまで、昨日の1,2コルへの登りと同様の急な雪の斜面の登りでしたが、慣れてきたのか結構いいペースで登れました。3,4のコルで昨日の自分たちのトレースに合流したところで、3峰から下ってくる3人パーティを発見。千葉松戸の岳人倶楽部のパーティだったが、この後彼らにかなり助けられることになります。5峰の懸垂下降点まで昨日のトレースを辿って簡単に到着。トレースがあるとぜんぜん違います。さて昨日回収できなかったロープはというと、末端が下降支点の直下にあるクラックに見事に食い込んでいました。末端処理のテープのせいでロープ末端部に柔軟性がないことも引っかかった原因かもしれません。
ところで、私はまだ懸垂下降方向の間違いに気づいておらず、今日はなんとか昨日見えた途中の懸垂支点で切って降りたいということだけを考えていました。体が降られないように下降コースを慎重に選び、なんとか途中の支点まで到着したのですが、、、ここで本当におかしいと気づきました(遅すぎ)。支点はハーケンとボルトの二本しかなく、完全にハンギンク状態(足で立てない)を強いられる、多くの人が利用しているとは思えないものでした。しかし降りてしまったからには仕方ありません。幸い支点はしっかりしているようだったので体重を移し、工作をしてからIさんに降りてきてもらいました。実は上では松戸のパーティが別方向(長次郎側)から下降していったみたいで、Iさんはまた相当不安を感じていました(申し訳ない)。さらにハンギンク状態での継続懸垂下降はIさんにとっては結構プレッシャーだったようで、苦労しながらようやく下まで降りました。結局今日もこの懸垂下降に1時間半くらいかけてしまいました。
5,6のコルに出るとすでに松戸のパーティが6峰の登りを始めていました。上半部もまったくトレースはありません。ここで私たちは今山行で初めて他パーティのトレースを使うことになりました。正直精神的にはかなりラクになりました。6峰の急な雪壁部分はロープを出して上りました。6峰からの懸垂下降では松戸のパーティが設置したロープを使わせてもらい、ここからまた私たちが先頭になりました。7峰へのナイフエッジをビビリながら渡ったところまではよかったのですが、ピークからの懸垂下降をするところで私は困ってしまったのでした。
事前にネットで調べた中で、7峰の下りの懸垂下降に「スノーボラード(雪きのこ)」を使用した、という記述を見つけていました。実際7峰ピークに露出した懸垂下降支点はなく、ここはスノーボラードを作るしかないと思って雪を削り始めましたが、実際私はスノーボラードで懸垂下降したことがなく不安を覚えていました。そうこうするうちに後続の松戸のパーティがやってきて、彼らは2人をピッケル支点の懸垂下降で下ろし、最後の人がスノーボラードで降りると言います。ただしボラードといっても稜線(雪庇?)全体を使う方法です。明らかに私が今つくっている、直径1mくらいのボラードよりは頑丈で合理的だと思ったので、ちょっと恥ずかしかったのですが、彼らが降りた後のボラードを使わせてもらうことにしました(彼らからは、ピッケル支点の状態で彼らのロープを使って下降しませんか、と親切に勧められたのですが、私はそこまで甘えるのはどうかと思い、お断りしました)。松戸の最後の人は無事ボラードで降りました。我々はその真似をしてまず私が降りましたが、ここでまた誤算が! ボラードがあまりに巨大で、後続のIさんがロープを二本手繰ることができなくなってしまったのでした(ちょっと分かりにくいと思いますが、懸垂下降はロープで輪を作ってそれをボラードにかけなければいけなかったのです)。 幸いIさんの機転で、下で私が片方のロープを固定すればロープ一本で下降できることに気付き、事無きを得たのでした。 7峰のピークから見えた8峰の登りはまるで垂直壁のように急に見えていました。あまりに無理そうに見えたのでルートを間違っているのかと思ったほどです。7,8のコルから長次郎谷へ逃げようかとも思いました。が、コルに下りるとそれほど絶望的な傾斜ではなく、松戸のパーティが先行してトレースができていたこともあり、比較的容易に登れました(感謝!)。落ちるとヤバいのでロープで確保はしました。8峰を越えると、ちょっとしたナイフエッジのあと比較的広いコルに出て突然縦走は終わりに近づきます。あとは目の前にみえている八ツ峰の頭を登るだけ、一気に緊張がほどけていきました。しかし先に登り始めた松戸のパーティはルートを見つけられず戻ってきて、八ツ峰の頭は長次郎側を巻いて、そのまま長次郎谷の支谷を下るといいます。時間も迫っていたので我々も八ツ峰の頭は省略して巻くことにしました。そしてここで松戸パーティとはお別れして、池ノ谷乗越まで行くことにしました。八ツ峰の細い雪稜から開放され、天気もこのころは抜群となり、快適な稜線漫歩ができました。予定では剱岳を越えて平蔵谷を下ることになっていましたが時間的に無理で、池ノ谷乗越から長次郎右股を一気に下りました。ここもトレースはまったくなし。上部は足もとられず快適に下降できましたが、それも熊の岩あたりまでで、以降は昨日の繰り返しでダラダラと谷を下り、暗くなる直前にテントに戻りました。疲れましたが、やるだけやったので満足感にひたりながら、明日は下山だとその夜はたらふく食べて飲みました。
29日 幕場(7:10)-ハシゴ谷乗越(8:20)-内蔵助出合(9:45)-黒部ダム(10:45)-黒部ダム駅(11:25)-扇沢(11:50)
のんびり明るくなるまで寝てました。テントを撤収して真砂とお別れです。天気はこの4日間で一番よさそうです。ハシゴ谷乗越までは疲れた体にはつらい登りですが、そこからは一気に下ってあっというまに内蔵助出合でした。ここで水をたらふく飲んで、またしばらくダムまで歩き、最後のダムの登りを汗して山行終了。お疲れ様でした。日焼け男ふたり大町温泉郷の薬師の湯で汗を流し、つくばに向かいました。
反省点:
事前調査不足(とくに5,6のコルへの下降)
経験不測(スノーボラード)
忘れ物(地形図、お茶類不足、ラジオ)
Iさんがいやな顔せずついてきてくれて救われました。感謝!
4月26日
扇沢(6:30)-黒部ダム駅(7:00)-内蔵助出合(7:55)-内蔵助平(9:00)-ハシゴ谷乗越(11:45)-真砂沢(13:30)
前夜の23時ころIさん号でつくばを出ました。運転を交代しながら扇沢駐車場に6時ころ到着。始発のトロリーバスに間に合いそうなので急いでパッキングして乗り込みました。黒部ダム駅までは往復2710円(荷物込み)で、室堂までだとその3倍以上のお金をとられます。
ダム脇の登山口から雪をくぐりぬけて外に出ました。朝早いのでやや雪が硬い急斜面をキックステップで黒部川へ降りていくところから山行開始です。雪が多いのか雪伝いに対岸に渡れました。そこから一日かけて真砂沢までの長い行程が待っています(人気がないはずです)。トレースもなく、実際他には誰にも会いませんでした。天気は曇りで暑すぎないのが幸いでしたが、それでも私は上半身服一枚でちょうどよかったです。内蔵助出合からすぐのところで川原に下りたためちょっと悪い登りがありましたが、それ以外は単調な登りがハシゴ谷乗越まで続きました。ハシゴ谷乗越からはできるだけ夏道沿いにルートを確認しながら真砂沢出合まで下降しました。稜線上の木のハシゴの部分は結構急な雪壁になっていました。真砂沢出合に着き、八ツ峰マイナーピークからのデブリが迫っていてちょっと気持ち悪かったですが、夏のキャンプ場だと思われる台地にテントを張りました。このころから雨になりました。結局この日は真砂は我々だけでした。
27日 真砂沢幕場(4:30)-八峰1,2のコル(8:15)-5峰(12:30)-5,6のコル(16:00)-幕場(17:00)
ガスが出ていましたがそれほど濃くなく、出発前の天気予報ではこの日から回復ということだったので、行ける所までいくつもりで出発しました。1,2のコルへの出合まで一時間あまり。剱沢から八ツ峰にくるパーティがあるかなとも思っていましたが、天気が悪いせいか、誰もやってきませんでした。出合からアイゼンを着けて、約3時間かけて1,2のコルまで雪壁を詰めました。なかなか急でしたが雪は安定していて悪いところはありませんでした。
1,2のコルに出ると八ツ峰の下半のものすごい雪稜が目に飛び込んできました。一気に緊張が走り、ホントに行けるのだろうかという不安が頭をよぎりました。トレースはまったくなし。
まず1.5峰まで上ってそこから長次郎側に10mほどの懸垂下降です。そこからはロープを結びあって行動しました。トラバースして稜線に戻り、2峰まで雪稜を登りますが、ピークに出るところで少しルートを探しました。ピークから長次郎側に少し雪稜を下ったところに懸垂の支点がありました。回収失敗した懸垂下降用のロープが残っていました(当然使えません)。懸垂下降で下り、3峰まで小ピークを越えながら雪稜を進みます。3峰ピークからは少し下ってまた懸垂下降。3,4のコル手前に降り立ちます。ここからも雪稜が続き、膝下くらいのラッセルをしながら4峰へ、そしてまた懸垂下降。そしてようやく5峰を登り切って、5,6のコルへの懸垂下降点にたどり着きました。
ここまで結構時間を食ってしまい、今後どうするか考え始めていましたが、とりあえず5,6のコルまで降りようと三の窓側に懸垂下降しました。これが後で気づくのですが大間違いで、露出していた支点に騙されました(事前にちゃんと情報収集しておけば、ここは長次郎側に降りることは確認できていたはず)。空中懸垂気味の急な懸垂下降で、50mダブルで下りましたが下までぎりぎり届かないという状態でした。途中に見えた下降支点にも体が振られて移れず、結局ロープいっぱいまでおりてそこにたまたまあったハーケンに体重を移し、2,3mのクライムダウンでようやく降りることができました。この下降に小一時間くらい時間をくってしまい、上にいるIさんは相当不安だったようです(ゴメン!)。Iさんが下るときにはなんとか途中の支点で一回切ってほしかったのですが、やはり体が振られててダメ。私と同様、苦労して下降する羽目になりました。
なにはともあれ、降りることができたのでほっとしたのもつかの間、今度は回収しようとしたロープがビクとも動かなくなりました。それでもIさんと2人がかりでようやく動き一本分は回収できたのですが、ロープの最後が何かに引っかかっているらしく、もう一本はどうしても回収できませんでした。仕方なく一本はそのまま残置し、少しのトラバースで広い5,6のコルへ出ました。もう夕方でへとへとでした。5,6のコルでビバークして明日再チャレンジ、も頭をよぎりましたが負担が大きいのでここはいったんベースに戻ることにしました。長次郎谷は結構足を取られて快適には下れませんでしたが、それでもなんとか17時ころには帰幕できました。
夜、明日のことをIさんと話し合いました。八ツ峰はあきらめ、源治郎をやろうかという案も出ました(Iさんは内心この案を支持していたらしい)。が私は八ツ峰をやってみたい気持ちが残っており、結論は翌朝出すことにしました。
28日 幕場(4:40)-3,4のコル(7:40)-5,6のコル(10:40)-8峰の取付(16:10)-池ノ谷乗越(17:00)-幕場(18:45)
朝、ガスがありベストの天気ではありませんが昨日並くらいにはよさそうでした。これで私の心は八ツ峰に決まり、上半部の縦走でロープが二本必要となる可能性があるので、3,4のコルから上がってロープを回収していくことにしました(源治郎に行きたかったIさんとしては、えー!だったと思います。ゴメン)。昨日のトレースがあるので、3,4のコルへの出合までは快調。そこからコルまで、昨日の1,2コルへの登りと同様の急な雪の斜面の登りでしたが、慣れてきたのか結構いいペースで登れました。3,4のコルで昨日の自分たちのトレースに合流したところで、3峰から下ってくる3人パーティを発見。千葉松戸の岳人倶楽部のパーティだったが、この後彼らにかなり助けられることになります。5峰の懸垂下降点まで昨日のトレースを辿って簡単に到着。トレースがあるとぜんぜん違います。さて昨日回収できなかったロープはというと、末端が下降支点の直下にあるクラックに見事に食い込んでいました。末端処理のテープのせいでロープ末端部に柔軟性がないことも引っかかった原因かもしれません。
ところで、私はまだ懸垂下降方向の間違いに気づいておらず、今日はなんとか昨日見えた途中の懸垂支点で切って降りたいということだけを考えていました。体が降られないように下降コースを慎重に選び、なんとか途中の支点まで到着したのですが、、、ここで本当におかしいと気づきました(遅すぎ)。支点はハーケンとボルトの二本しかなく、完全にハンギンク状態(足で立てない)を強いられる、多くの人が利用しているとは思えないものでした。しかし降りてしまったからには仕方ありません。幸い支点はしっかりしているようだったので体重を移し、工作をしてからIさんに降りてきてもらいました。実は上では松戸のパーティが別方向(長次郎側)から下降していったみたいで、Iさんはまた相当不安を感じていました(申し訳ない)。さらにハンギンク状態での継続懸垂下降はIさんにとっては結構プレッシャーだったようで、苦労しながらようやく下まで降りました。結局今日もこの懸垂下降に1時間半くらいかけてしまいました。
5,6のコルに出るとすでに松戸のパーティが6峰の登りを始めていました。上半部もまったくトレースはありません。ここで私たちは今山行で初めて他パーティのトレースを使うことになりました。正直精神的にはかなりラクになりました。6峰の急な雪壁部分はロープを出して上りました。6峰からの懸垂下降では松戸のパーティが設置したロープを使わせてもらい、ここからまた私たちが先頭になりました。7峰へのナイフエッジをビビリながら渡ったところまではよかったのですが、ピークからの懸垂下降をするところで私は困ってしまったのでした。
事前にネットで調べた中で、7峰の下りの懸垂下降に「スノーボラード(雪きのこ)」を使用した、という記述を見つけていました。実際7峰ピークに露出した懸垂下降支点はなく、ここはスノーボラードを作るしかないと思って雪を削り始めましたが、実際私はスノーボラードで懸垂下降したことがなく不安を覚えていました。そうこうするうちに後続の松戸のパーティがやってきて、彼らは2人をピッケル支点の懸垂下降で下ろし、最後の人がスノーボラードで降りると言います。ただしボラードといっても稜線(雪庇?)全体を使う方法です。明らかに私が今つくっている、直径1mくらいのボラードよりは頑丈で合理的だと思ったので、ちょっと恥ずかしかったのですが、彼らが降りた後のボラードを使わせてもらうことにしました(彼らからは、ピッケル支点の状態で彼らのロープを使って下降しませんか、と親切に勧められたのですが、私はそこまで甘えるのはどうかと思い、お断りしました)。松戸の最後の人は無事ボラードで降りました。我々はその真似をしてまず私が降りましたが、ここでまた誤算が! ボラードがあまりに巨大で、後続のIさんがロープを二本手繰ることができなくなってしまったのでした(ちょっと分かりにくいと思いますが、懸垂下降はロープで輪を作ってそれをボラードにかけなければいけなかったのです)。 幸いIさんの機転で、下で私が片方のロープを固定すればロープ一本で下降できることに気付き、事無きを得たのでした。 7峰のピークから見えた8峰の登りはまるで垂直壁のように急に見えていました。あまりに無理そうに見えたのでルートを間違っているのかと思ったほどです。7,8のコルから長次郎谷へ逃げようかとも思いました。が、コルに下りるとそれほど絶望的な傾斜ではなく、松戸のパーティが先行してトレースができていたこともあり、比較的容易に登れました(感謝!)。落ちるとヤバいのでロープで確保はしました。8峰を越えると、ちょっとしたナイフエッジのあと比較的広いコルに出て突然縦走は終わりに近づきます。あとは目の前にみえている八ツ峰の頭を登るだけ、一気に緊張がほどけていきました。しかし先に登り始めた松戸のパーティはルートを見つけられず戻ってきて、八ツ峰の頭は長次郎側を巻いて、そのまま長次郎谷の支谷を下るといいます。時間も迫っていたので我々も八ツ峰の頭は省略して巻くことにしました。そしてここで松戸パーティとはお別れして、池ノ谷乗越まで行くことにしました。八ツ峰の細い雪稜から開放され、天気もこのころは抜群となり、快適な稜線漫歩ができました。予定では剱岳を越えて平蔵谷を下ることになっていましたが時間的に無理で、池ノ谷乗越から長次郎右股を一気に下りました。ここもトレースはまったくなし。上部は足もとられず快適に下降できましたが、それも熊の岩あたりまでで、以降は昨日の繰り返しでダラダラと谷を下り、暗くなる直前にテントに戻りました。疲れましたが、やるだけやったので満足感にひたりながら、明日は下山だとその夜はたらふく食べて飲みました。
29日 幕場(7:10)-ハシゴ谷乗越(8:20)-内蔵助出合(9:45)-黒部ダム(10:45)-黒部ダム駅(11:25)-扇沢(11:50)
のんびり明るくなるまで寝てました。テントを撤収して真砂とお別れです。天気はこの4日間で一番よさそうです。ハシゴ谷乗越までは疲れた体にはつらい登りですが、そこからは一気に下ってあっというまに内蔵助出合でした。ここで水をたらふく飲んで、またしばらくダムまで歩き、最後のダムの登りを汗して山行終了。お疲れ様でした。日焼け男ふたり大町温泉郷の薬師の湯で汗を流し、つくばに向かいました。
反省点:
事前調査不足(とくに5,6のコルへの下降)
経験不測(スノーボラード)
忘れ物(地形図、お茶類不足、ラジオ)
Iさんがいやな顔せずついてきてくれて救われました。感謝!
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