大峯奥駆4/30-5/5

 奈良県の大峰山脈を6日かけて縦走した.これは大峯奥駆道といって修験道の巡礼の道であり,世界文化遺産に指定されている.幕営装備と6日分の食糧なんて背負えるのかと思ったが,意外に少ない18キロ.後半は暑くて辛かったが,計90kmを踏破することができた.

4/30 晴れ 吉野山-二蔵宿小屋 
 初日はゆっくりと,11:30に吉野駅を降り,奥千本の金峯神社まで1時間半車道を登る.そこから3時間で今日の宿泊地の二蔵宿小屋に到着.この小屋は無人の避難小屋であるが,ダルマストーブを備えた居心地のよいところだ.奥駆道には,このような避難小屋が随所にあって心強い.なお,今後「~宿」という名前がよく出てくるが,これは宿屋ではなく,「~しゅく」と読み,行場を意味する.神様が宿るということらしい.
11:30吉野駅-13:15金峯神社-16:00二蔵宿小屋


5/1 
晴れ 二蔵宿小屋-弥山
 5時に出発.気温は5℃くらいか.稜線では肌寒いくらいだが,それゆえサクサクと進む.五番関には「女人結界門」がある.そう,この先の山上ヶ岳(大峯山寺と宿坊がある)は今日でも女人禁制なのだ.山上ヶ岳(1719m)に9時前に到着.この先も順調に進む.大普賢岳(1780m)から七曜岳までちょっとしたクサリ場があり,距離の割には時間がかかる.前半の核心部と言えそうだ.宿泊予定の行者還小屋に着いたのは13時半.すでに8時間半歩いているが,この先の道はよく知っているので進むことにした.次の幕営可能な場所は弥山(みせん)の山頂,行者還小屋から3時間の道のりだ.最後に弥山まで高度差300mの登りがあるのだが,これが11時間行動した身にはきつかった.やたらと腹が減って,貴重な行動食を浪費した.何回も休憩し,弥山小屋のテン場に17時に到着した.標高が1900m近くあるので寒い.冬用下着とダウンジャケットを着込む.テントの中で炊事をして早々と寝る.12時間行動は疲れる.
5:05二蔵宿小屋-8:30大峯山寺-10:40大普賢岳-13:20行者還小屋 -17:05弥山小屋

女人結界門

5/2 晴れ 弥山-釈迦ヶ岳中腹の千丈平
 寝過ごして6時起床.結構寒い.水滴が凍っていた.7時出発.今日は近畿最高峰の八経ヶ岳(1915m)を越えて釈迦ヶ岳(1800m)までの縦走だ.原生林の中をゆく,この縦走のなかで最もすばらしい行程である.釈迦ヶ岳の登りはちょっとした岩場が続くが,ラクに通過する.釈迦ヶ岳頂上には13:15に到着.ガイドマップを見ると,山頂から少し下った千丈平というところに水場があり,テントも張れるようだ.大峰山脈一帯はスペースさえあれば,基本的にどこでも幕営していいようだ.これはいいことなのか悪いことなのかわからないが,登山者がそれほど多くないから許容されるのだろう.千丈平は野生のシカがゴロゴロおり,しかも人間を恐れない.水場はすぐ近くに沢があり不自由しない,とてもよいところだ.天気がよく,時間があるので,シュラフや靴を干してのんびりした.
7:05弥山小屋-9:20舟ノたお-10:10楊子ノ宿小屋-13:15釈迦ヶ岳-14:00千丈平
八経ヶ岳近くの原生林の中の道

5/3 晴れ 千丈平-行仙宿山小屋
 5時20分出発.今日のコースタイムは10時間以上.4日目で疲れがたまっていることから,この縦走の核心といえそうだ.南へ向かうほど標高はどんどん低くなり,植生が変わってくるのが面白かった.はじめは高山の雰囲気だったのが,しだいに里山っぽくなってくる.と同時に暑くなるのが辛かった.秋冬用トレッキングパンツが蒸れ蒸れに…平凡な登山道をアップダウンして行仙宿山小屋に到着.ここは,ボランティアで南奥駆道を整備している「新宮山彦ぐるーぷ」の方々が独力で建設・維持されているすばらしい小屋だった.管理人のおじいさんはとても親切な方だ.今日の宿泊者は6人のみ.
5:20千丈平-7:35嫁越峠-10:55持経ノ宿-13:20転法輪岳-15:45行仙宿山小屋

ようやく後半

5/4 
晴れ 行仙宿山小屋-玉置神社-五大尊岳付近
 5時半出発.今日もアップダウンが続く.途中の槍ヶ岳(!)と地蔵岳ではクサリ場がある.7時間歩いたところに玉置神社という大きな神社があり,付近で幕営できそうだが,最終日の行動をできるだけ短くするために,先へ進む.玉置神社から先は,2日目以降抜きつ抜かれつ,ほぼ同行程を進んできた大阪の佐々木さんとともに行動した.高い気温と細かいアップダウンに体力を消耗し,五大尊岳(825m)まで進んだところで力尽きた.結局11時間行動.狭いスペースで幕営.本当に疲れた.
5:30行仙宿山小屋-7:50地蔵岳-12:40玉置神社-16:40五大尊岳

5/5 
晴れ 五大尊岳-熊野本宮大社
 夜明けとともに出発.標高は600mほどなのに朝霧が雲海になっている.大峰山脈は熊野川に没しており,最後に登山道は川原に下りる.クライマックスは熊野川の渡渉だ.目の前には熊野本宮大社跡(大斎原).大社にお参りしたあと,川湯温泉で6日間の汚れを落とし,バスとJRを乗り継いで実家に帰還.佐々木さん,2日間お世話になりました.
5:00五大尊岳-9:00熊野川渡渉-熊野本宮大社
雲海
熊野川を渡渉(佐々木さん撮影)

 6日間の縦走は,いかに体力を消費せず歩くかを考えるいい機会になった.普段から山を歩いているため,スタミナそのものは連日10時間でも大丈夫だったが,下りでひざを痛めないように気を配った.また,弥山では朝氷点下だったのに対し,南部では10数度と,気温の変化が大きかったことは辛かった.この奥駆道を歩くには暑さ対策が必須なようだ.また今度,違う季節に「いいところ取り」で歩いてみたい.全行程歩くのは,40年後にリタイアしてからまたやってみたい.

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