連休の剱岳早月尾根
5月1日夕方滑川ICに近ずくにつれ前線の通過で激しい雨と強風に出会う。北陸道を走行する車が強風で振られる感じだ。暗くなり雨もやまないので馬場島まで11kの地点にある早月川沿いの廃校となった元小学校の玄関の軒先を借りる。今回のメンバーは直前に変更があり、60歳代のK氏と筆者のO、それにスウェーデンからの留学生22歳のM君の3名だ。
5月2日曇り、伊折部落を過ぎて馬場島まで5kの地点にあるゲートが閉まっている。例年は連休にはあいているのに今年はダメなようだ。仕方なくゲートの前に車を止め歩きだす。7:20馬場島着。上市警察馬場島派出所に登山届を提出する際に状況を聞いた。「今年は3月に降雪が多く、山岳部の積雪はまだ例年の3月といった状況だ。昨夜の強風は上部では暴風雨となり早月小屋周辺で3パーティーがテントを飛ばされた。また源次郎尾根登攀中の登山者2名が雪崩にあい、1名が下山中に疲労凍死した」とのこと、事前の「連休の山は荒れる」との予想と合致する。
8:00長い早月尾根に覚悟を決めて取り付く。12:20標高1600mの標識、15:10標高1880m(GPS)早月小屋手前でテント設営。予想通り60歳代の体力では後半スタミナが続かない。無理をせず鳥の鳴き声、沢の音、風の音に耳を澄まし楽しむ。M君とロープワークの練習をする。
標高2300mあたりから見た早月小屋
5月3日高曇り、無風。4時起床、6時出発。右に大日、奥大日、左に猫又、赤谷、白萩、赤ハゲ、白ハゲ、小窓尾根と一望に望む。7:50早月小屋、12:00標高2650m地点でテント設営。この付近から急傾斜になるルートと時間、荷を考慮し本日はここまでとする。午後は小雪、濃霧、無風。夕食はシイタケ雑炊。M君は何でも食べる、それも倍の量だ。合気道、柔術で毎日鍛えており並みの体力ではない。3人分のザックを一人で担いででも山頂まで行きそうな勢いだ。
シシガシラ附近でロープを出すM君
5月4日曇り、リーダーのK氏が体調悪くテントで待機し、視界50m程の中6:00、OとM君と二人で頂上へ向かう。昨日からの降雪でかなりトレースが消えている。アイゼンは快適に効くがルートファインデイングに気をつける。急な雪壁は一か所念のためスタンディングアックスで確保する。登りはアイゼンとピッケル、特にピックを効かせたアイスクライミングの感覚で確実に登れる。8:30頂上。屋根だけ出した祠の前で後続のパーティーに写真を撮ってもらった。
頂上目前のM君
頂上にて
祠の後方の盛り上がった雪面でGPSで確認すると高さは3008mを示す。山頂の三角点は2999mであるから約10mの積雪がある事になる。少し三ノ窓側に寄ったフラットな所でツエルトを被り視界が晴れるまで待つ。時々サーッと晴れるが数秒でまたガスの中だ。長次郎頭、八峰頭がやっと見える程度。
長次郎の頭と剱尾根
ガスの中の八峰
2時間ほど待ったが晴れそうにない。じっと待つのも寒い。10:30下山を決める。
剱沢小屋と周辺のテントを山頂付近から望む
今年は長次郎、平蔵等は雪崩の危険性が高く入るのは極めて危険という。剱御前方面からスノボーを背負った3人の登山者が来る。平蔵を滑るつもりなのだろうか? 別山尾根との分岐はわかりずらい。岩に捨て縄をかけ2ピッチ懸垂下降する。M君も母国で少し経験があるらしく落ち着いて降りてくる。
カニノハサミを懸垂下降で下るM君
他の下り斜面はバックステップで慎重に下る。M君の注意を喚起するため「Walk down slowly, step by step」と何度も声をかける。彼も気持ちよく「はい!」と日本語で返事する。中々のチームワークだ。
13:00テントサイトに帰着。K氏も体調が良くなっており頂上を踏まなかったことを後悔している。予備日はあるが下ることにする。早月小屋で管理人とだべる。小屋は西大谷尾根北東面からの雪崩を眺める絶好の地点という。最近はエキストリームスキーヤー(冒険スキー野郎)が室堂乗越を越えて一気に立山川を馬場島まで下るという。雪崩にあわないのか人ごとながら心配になる。16:00標高2150mでテント設営。
5月5日無風快晴。下は雲海、一日違いで絶好の天気となった。M君が真顔でもう一度頂上に行こうと誘う。ここまで下りてまた登り返すのはどうにも気持ちが動かない。それにしても良い天気となった。対岸の大日岳、奥大日岳が絵に描いたように美しい。
3人で記念写真を撮りたいが三脚はなく、他のパーティーも無くやむなく不安定なザックの上にカメラを置き自動で撮ってみた。
松尾平から白萩川側に直接下りた。下山日になって5月の山らしい暑い一日となった。9:30馬場島下山報告、ゲートまでは親切にも宿泊所の車で送ってもらう。滑川まで出て街の公共湯に入る。M君が最も好きだと言う鮨をご馳走すべく店を探すが休日の昼時は中々空いてない。やっと回転鮨屋を見つける。no limitで彼が食べ始める。無理な様子もなく27皿も皿を重ねた。
仙台に帰るM君を渋滞が予想される関越道を途中で降り何とかon timeで高崎駅まで送り届けた。
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