安全登山普及指導者研修会 6/27-29

国立登山研修所に講習会へ参加してきました。
(上写真は雑穀谷の岩場、最終日の練習場)

私は登攀コースでの参加
今回の目的はリスクを見積もりそれに備えると言うことで、ロープワークに必要な基本技術を一から見直しました。

あまり基本的なロープワークについて書いても仕方ないので、今回知れた小技的な事をピックアップしてみます。(ロープワークにていては例会や県連講習会でフィードバックしたいと思います。)


■懸垂下降

①下降器とカナビナの相性

下降器がATCの場合D環カラビナを使用していると、片方のストランド(ロープ)にだけ抵抗が掛かり、片効きが発生する。
【写真の様にカラビナのR端にロープがより易い】
その結果、気付かないウチにロープ末端がズレ、下降にロープが足りなくなりスっぽ抜けが起こるおそれがある。
ATCを使用する場合、HMSカナビナ(洋なし型)を使用するべきである。

②懸垂下降時の仮固定
下降器から出ているブレーキストランドをS字状になるように片手で押さえる。
下降器と連結しているカナビナにブレーキストランドを通し、ミュールノットでカナビナに固定、余ったストランドをオーバーハンドノットで固定。

これはビレイ中の自己脱出時にも繋がる


■アンカー構築

①マスターポイントのオフセット
アンカーのマスターポイントからセルフビレイとセカンドの確保を段差を付けて(オフセットにする)構築すると、支点がゴチャゴチャせず確保もしやすくなる。

作ったマスターポイントは次のトップの最初の支点としても使用出来る。

②固定分散時のロープ結び方
ダイニーマでアンカーを構築する場合は多いが、ポリエチレンは耐熱性が低く、ダイニーマをオーバーハンドノットで結んで縛ってしまうと、衝撃荷重が掛かったときに結び目内部で熱が篭もりやすい、その為ダイニーマでの固定分散時の結び方はクローブヒッチが良い。

カナビナで簡単にマスターポイント用のクローブヒッチを行う方法を教えてもらった。



(他の方がアップロードしていた国立登山研修所にて上記の方法を教えてもらっている動画になります)


■ランヤード

①パーソナルアンカーシステム(PAS:パス)の勧め
上記のダニーマの結び目には熱が篭もりやすい点があるため、ランヤードを結び目で輪を作ったダイニーマの使用は使用は控えたほうが良い。
20kNの強度があるループが連結されているPASを使用するのが一番望ましい。

 ※デイジーチェーンの縫い目で出来た輪の部分の強度は3kN程
 ※※また衝撃荷重が発生するのを避ける為に支点から体は下にしておき、常にテンションをセルフビレイ支点へと掛けておく事も重要。

②ランヤードはビレイループでなくタイインループへ
ビレイループの強度は15kNの引っ張り強度があるが、傷んだハーネス(ビレイループ)へランヤードをガースヒッチで結んで使用していた時に摩擦でビレーループが切断してしまった墜落事故が発生した事がある。
これ以来ランヤードはタイインループへ通す事が推奨されている。
(参考画像はビレイループに通してますが…有名なクライマーがこれで死んでるらしいです…)
(メトリウス社 PAS取り扱い説明書から)

■カム(アクティブリムーバルプロテクション)について

①カムの種類
図に阻止角度
この角度がカムが回転して発生する支持力(ホールディングパワー)とワーキングレンジを決定する

 【各メーカーカムの阻止角度】
DMM ドラゴンカム 13.75
メトリウス マスターカム 13.25 (ちょっとあやしいけどたしか…)
ワイルドカントリー フレンズ 13.75
BD キャメロット 14°
 ※阻止角度が大きいほどカムは扁平しキノコ形状へ近づきワーキングレンジは広くなる。
  阻止角度が小さい程ホールディングパワーは強くなる。(物理的な計算式での根拠聞くの忘れました…)






②リムーバルプロテクションでのアンカーセット【オポジション方法】
 リムーバルプロテクション(カム・ナッツ等)で支点を作る際、上下の引っ張りに足してプロテクションのスっぽ抜けが発生しないような支点の構築方法。
図の様に上下でプロテクションを設置し、スリングをカラビナへ通し、ムンターヒッチで固定し(2重3重)余ったスリング端へ環付きカナビラを通しこれをマスターポイントとする。

 水平クラックで左右へプロテクションを引っ張る様な設置の仕方も有効。

 ※パッシブプロテクション(ナッツ等)で支点を作る際には推奨度は高い。


③カムが抜ける時
 写真の場合、右の岩が浮いておりカムを引っ張るとプロテクションが広がる力に岩が負けて簡単にカムがスっぽ抜けました。

■ロープの振り分け
写真の様にコイルの長さを徐々に短く巻いていく、つるべでの次のロープ繰り出しの時に出ていくロープが他のロープをすくい上げる事が少なく、ロープの絡まりの発生を少なく出来る。

振り分け時はクライマー側のストランド(ロープ)を持つ手でブレーキストランドも両方持ち、空いた手でロープの振り分けを行う。※ブレーキストランドは離さない(当たり前ですが…自分は振り分けが苦手だったので)

振り分けのタイミングはコイルした長さの二倍程度でたタイミングで上記の様に手を話し左右どちらかにロープを振れば簡単に出来る。



以上が共有しておきたい項目をピックアップしたものになります。
他にも色々聞いたりしたのですが、全てを書いていると膨大になってしまうので今回はこのぐらいで。

あと登山のリスク管理として、「リスクを見積もり、それに備える事」は基本的ですが重要な概念であり、自分も普段蔑ろになっている部分が多いと再認識出来ました。


時間があればまた追加して記事を書くかもしれまん。

 by56

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